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END2 後日談
とぼとぼと数歩歩いた後、もう一度後ろを振り返る。
図書館は今もあの頃と変わらず堂々とそこに存在していた。
私は…。
本当に「君」を救うことができるのだろうか?
今も私の心の中では「君」があの図書館で本を読み続けているというのに。
私があの男を許すことは生涯ないのに。
長い年月で投げられた言葉を思い出す。
「昔のことでしょ?そろそろ前を向こうよ」
「親のせいにするのは良くないよ」
「お父さんも不器用なだけで本当はあなたを大切に想っていたよ」
そんな言葉を聞くたびに体ごとズタズタに切られた気がした。
それが善意からきているだけにどうしようもなく。
せめて心だけは守ろうと、何も感じない練習をした。
自分の話をするのが怖くなった。
父について尋ねられ、他界したと嘘をついたこともあった。
……
私は。
本当に「君」を救わないといけないのだろうか?
自分の心に嘘をついてまで。
ああ、違うな。
「救いたい」だけなんだ。
「…また来るね」
もう一度、そっとそう呟く。
また来て、次も来て、それでも「君」を救えなかったら。
救えなくてもいい。
この傷に決着をつけなくてもいい。
ぼろぼろの「君」を抱えて生きていこう。
傷だらけのままで、一緒に手を繋いで歩いていこう。
きっとそれくらいなら私にもできるから。
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